POISON GIRL BAND「60分漫才」


POISON GIRL BANDが、突如行った漫才イベント「60分漫才」に行ってきました。
東京へやってきて3年が経ちますが、(一応)お笑い追っかけのメインに彼らを置いていまして、しかしながら60分なんていう長い時間彼らの漫才を見続けるなんて経験は初めてで。
そもそも、賞レースに向けて作られた新ネタを中心に見ていたので、5分前後のネタを2,3本見るぐらいだったわけです。それが突然60分も!なんとも贅沢!そして、一体どういうやり方で60分を演じるのかという点も非常に楽しみにしていたのです。

終わってみれば、なんというか、ただただとんでもないものを見せられたというような感じです。
すごく感情は揺さぶられているのですが、全然言葉に出来ないので、いつにも増して脈絡がありませんが、とりあえず感想を。
ただただ、すごい。 漫才ってこんなに会話になるんでしょうか。
POISON GIRL BANDといえばその、漫才の自然さ…どこからがフリートークで、どこからが台本なのかが分からない…という漫才をすることでお馴染みですが、今回のそれは「分からない」どころの騒ぎでは無いぐらい、会話でした。
以前やっていた漫才トークというライブにて「トーク」として話していたことを、そのまま漫才にしているような。

最初の入りは「最近気づいたことがあるんだけど」から始まり、「もしかしたら、お前俺より背高くない?」という誰がどう見ても「当たり前」なことを「最近気づいた」と言い張る阿部さんと、それに対して吉田さんは至極真っ当にツッコミを入れるんだけれど、全然響かなくて、何度も何度も繰り返す…と言うよりは、むしろ悪化していく阿部さんの主張。
阿部さんの発言によって見ている側は引き離されてしまうんだけれど、吉田さんの発言によってなんとか寄せてもらえそうになって、でも阿部さんによって再度引き離されて…と言うような。
この「背が高い」という話題から、映画館などで後ろの席の人に迷惑をかけてしまう→迷惑をかけると言えば食事中のタバコと会話が移動していき、阿部さんによってとんでもない方向からオチが飛んできたかと思ったら、そこから派生して「好きな駄菓子ベスト10」というネタに入っていくという。
今回の60分漫才というように、通常のネタ尺(5分程度)より断然長い時間ぶっ通しでネタをやる、という試みを見るのは初めてではないにしても、2,3度あるぐらいのもので、それらは「いくつかのネタを繋いで60分にする」というような作り方で、明らかに「オチ」として捉えられるものが存在して、それを超えれば「フリ」がやってくるのだけれど
今回の、ポイズンの60分漫才は次のネタに入る境界が存在していなかった*1ように思う。そして、そういう繋げ方がいかにも「自然な会話」のようだった。

途中、これは本当にトークなんじゃないかと思うんだけれど、明らかに意図を感じるネタの移り方だとか、何よりも最後のネタでの切り替わりによって、それらが全て「ネタ」なんだということを思い切り突きつけられて。
吉田さんは何度も心底うんざりした表情で阿部さんの発言を否定したり、流そうとしたりしていたし、今思いついたかのように怒りを表現していたけれど、あれもこれも全て演技なんだと思うと、ゾッとする。

最後のネタはもうすごすぎました。何あれ。
現実世界の常識からどんどん遠ざかっていくのに、作り物感が一切無い。一体何を喋っているのか。「携帯電話が便利」という入りから、こんな展開に行き着くのは彼らだけだと思う。
これまで私が見てきたものでは、取り扱っている内容が現実世界の事実とかけ離れていけば、それに伴って演じている本体も現実世界から離れていくというもので。
それはポイズンに関しても同じだったんだけど。
ポイズンの漫才は、置いていかれる感覚が気持ち良いというか、「待って待って」と追いかけてるのに遥か遠くにいってしまっていて、その異世界感こそ醍醐味だなんて思っていたのですが
最後のネタは「もう追いつけない!」というぐらいまで引き離された直後、超スピードでこちらに戻ってきてくれるという。
これまで見ていた漫才ではポイズン自身も遠くの存在だったものが、今回のネタでは彼らの本体はずっと近くにあって、漫才の会話だけが離れていくという感じ。だからどんなの突拍子もない話題だとしても、リアリティが失われなくて。こんな会話は会話として異常なのに、どんな漫才よりも会話になっているという不思議。


もう一度見たいのだけれど、もう一度見るのは少し怖いような気もする。おそらく、丸っきり同じように演じるのだと思うから。ポイズンの新ネタを2回目に見るときはアドリブだと思った色々が台本だったということに驚かされるのですが、今回のネタはどれも自然な会話すぎたので、それを突きつけられるのが楽しみを超えて怖いぐらいです。
吉田さんの脳内でこれらが作り上げられたのだと思うと、ゾッとします。それでもって、更にそれを演じきってしまうPOISON GIRL BANDというコンビに更にゾッとします。
もう、私の中では消化しきれません。終始ワクワクゾクゾク(特に最後のネタはかなり痺れた)しながら見ていたけれど、この高揚感と言うか、感情を上手く言葉に出来ないです。単純に私の経験値では処理しきれないぐらいの出来事が起こってしまって、為す術が無いという感じです。すごいってことは分かるんだけれど。


賢くて頭の良いポイズンファンの方々が、上手く整理してくれることを楽しみにしています。

*1:厳密に言えば話題が移り変わる瞬間というのは感じ取れたけれど