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いつしよ(神保町花月)


神保町写楽先生こと、LLR伊藤さん脚本のお芝居公演「いつしよ」の千秋楽を見に行ってきました。以前オムニバス形式の脚本のひとつを書かれたときに大分評判が宜しくて、今回も私が見に行く前に見に行った方々の伊藤さん見直した発言を受けてかなり期待して見に行ったのですが、確かにすごく良かったです。
千秋楽、ということでネタバレもOKだと思いますから好き放題かかせていただきます。
役名が全然覚えれていないです、すみません。神保町ブログでもし発表されたら訂正しようと思います。

【ザックリあらすじ】
  • もう中学生…ジョニー(シロ)
  • グランジ遠山…しんや(兄)
  • クレオパトラ長谷川…たくや(弟)
  • オコチャ…しんやとたくやの父
  • 加藤亜衣…しんやとたくや母
  • クラオパトラ桑原…ボンボン大学生
  • グランジ佐藤…チンピラ
  • グランジ五明…クロ
  • 石井あす香…図書館の受付さん(憧れの人)

兄弟でバッテリーを組んでいたが、兄の厳しい特訓の影響か肩を壊してしまった弟
高校卒業と同時に、両親が「2人で過ごしたい」との理由で家を追い出され徒歩10分圏内でバラバラにすごしている家族。
父の誕生日祝いということで家族が揃った日の夜、日課のジョギングの最中にお腹を空かせて倒れている男*1を発見するしんや。
持っていたお菓子を与えて、何とか復活するも「家に帰ると罰がこわい。痛いこととか、聴きたくないことを聴かされる」と言って家に帰りたがらない男。
幼い頃から捨て犬などを放っておけなかったしんやは、つい家に泊まらせてしまう。

しんやは図書館の受付のゆいちゃんを慕っており、毎日のように図書館に通っている。そこに同じようにゆいちゃん目当にやってくるチンピラとボンボン大学生
ゆいちゃんを巡っていがみ合う3人を「仲良し、ともだち」と的外れな表現をするジョニー
誕生日祝いの際に「気になっている人がいる」という話をしていたため、兄の想い人がどんな人か見に来たたくや。
話してみると、たくやとゆいは本の趣味なども合い、ゆいはなんとなくたくやのことが気になってしまう。
図書館で騒ぐジョニーを外へ追いやった後、謎の黒い男が現れ「シロはどこだ」と4人を問い詰める
シロとは誰を出しているのか分からない4人は、黒い男にはむかうも、不思議な力でうちのめされてしまう。
しんやはジョニーの不思議な雰囲気に推されてゆいへの告白を決意するも、それを伝える前にゆいのたくやへの気持ちを知ってしまう。
何も知らないたくやは、いつもの家族での食事の際に「ゆいちゃんとどうなった?」と聴いてしまい、「ふられた、お前のことが好きみたいだよ」と。
そこで、「出来の良い弟」に対して今までしんやが抱いていたコンプレックスが露わになる「なんでオマエなんだよ」「オマエがいつも俺のものを奪っていく」
とびだすたくやと、追いかけるしんや。そしてそれについていくジョニー
たくやの行き先は図書館だった。そこでゆいに対して「あんたなんて興味ないから」と酷い言葉を発する。
謝れと詰め寄るしんやに対し、たくやは「おれは兄貴のものをとろうなんて思っていない」「兄貴は俺の所為にして逃げてるだけだ」と自分に怪我をさせてしまったことを悔やんで、野球をやめてしまったしんやに対して「本当は野球を続けてほしかった」ということを伝え去っていく。 2人を追っている最中に黒い男と出くわすジョニー、「クロ」と「シロ」2人は兄弟だった。
図書館で4人をうちのめした際にクロは「罰」を与えていた。暴力ばかり奮っていたチンピラには「他人に奮った暴力が己に返って来るように」、親のお金で遊んでいい気になっていたボンボンには「周囲の人間の心の声が聞こえるように」、しんやとたくやの兄弟には「本当のことしか口に出せないように」という罰を。
それを聞いたジョニー(シロ)は、憤慨ししんや・たくや兄弟を再び探すに周る、その道中に痛みに苦しむチンピラに会い、自分の周囲の人間が自分のお金目当に近づいていると知り人間不信に陥っているボンボンとも出くわす。ジョニーは排他的になっている2人に対し「ともだち」「ともだちのことは心配」と慰める
先を急ぐジョニー
その間に父親から、たくやが「いつでもまた野球を始められるように」としんやが捨てた野球道具一式を拾ってきていたことを聞かされるしんや
ジョニーはたくやを見つける、「怪我のことがあって兄貴がおれに遠慮してるって感じて」「遠慮していくうちに嫌われるような気がして」という本心を聞き、ジョニーはたくやをしんやの元へと連れて行く。
本音を言い合い、そしてしんやは野球をまた始めると決意。2人は仲直り。「2人を見ていたら、クロの言うことが分かりました」と言いしんやの元を去っていくジョニー
一方そのころ、チンピラはボンボンに友達になってくれないかと頼む。そして同じようにゆいにも友達になるよう申し込む
そのときのチンピラの良い声と、ゆいが心の中で唱えたポエムにひらめいたボンボンはバンドを組むことを決意する。
クロの言う「罰」は人間を苦しめる為にやっていたのではないと理解し、クロの元へ帰るシロ。和解する兄弟

表現能力がなさすぎて泣けてきます。神保町ブログのほうであらすじが発表されたならば、この酷いあらすじは消させてもらいます…本当、感動を伝えられなくてもどかしいです。

では、以下自分の感想を
演出が素晴らしいですね。私は最初の出演者紹介の一コマでもう泣いてしまいそうでした。ゆいと仲良しなたくやを見て、悲しそうにするしんやの表情がめちゃくちゃ良かったです。それだけでギュンときてしまいました、遠山さん恐るべし。
オコチャさん演じる夫婦はイチャイチャラブラブの設定でして、結婚20年も経つのに「今好きな気持ちを伝えなきゃ」と言って奥さんにラブレターを書くようなだんなさんなんですが。そのラブレターの文面に「天使のようだ」という表現がありまして。それをたくやは「キリスト教では、天使っていうのは女性ではなく男性なんだよ。翼が無くて…」と否定するシーンがありまして。明言はされませんでしたが、もう中と五明さんの演じていた「シロ」と「クロ」は「天使」という設定だったんだと思います。
ここで、伊藤さんがすごいなーと思うのは「天使=良いことをする」という前提を一度覆してるってことなんですよね。覆しているというか、「クロ」が『罰』を与えているという事実が「天使」というイメージからはかけ離れていて、「シロ」が「天使」だってことには簡単に気づけても、「クロ」も「天使」ってことに気づくのは、クロ自信が「弟のことは心配なものだろう」と言うところだと思うんですよね。それまでは「クロ」を完全に悪党だと思っているわけでして。
で、その「クロ」の言う『罰』も最終的には良い方向に導くためのひとつのきっかけを与えようとしていた、ということでして。(チンピラも人の痛みを知ることで暴力をやめれたし、ボンボンも本当の友情を見つけれたので)結論的にはやはり「天使=良いことをする」という前提に戻ってきているわけです。いやはや。
「クロ」は出番的にはそんなに多くなくて、ほんとチラチラとしか現れないのですが存在感が半端じゃなかったです。五明さんすごすぎます。私の勝手な妄想ですが、伊藤さんは伊坂幸太郎が好きということでおそらくそれなりの影響を受けていると思うんですよね。そんでもって、この「クロ」の感じは死神の精度の死神とか、あとはグラスホッパーに出てくる処刑人の鯨とかのイメージに近いなぁと*2感じました。私も伊坂幸太郎好きなんです、えへへ。
というか、この物語自体…人間以外の生物(?)が人間の人生にちょっかいを出してくる、という点においては「死神の精度」に極めて近いのかもしれませんね。
自分が個人的にわぁ、と思ったのはゆいがよく読む本にファンタジーを挙げた際に「恩田陸とかー」と言ったことですね、あー伊藤さんも恩田陸読むんだ!と思って1人テンション上がってしまいました。私、恩田陸も好きなんです。えへへ。
最初のほうに、シロが「帰ったら、怖いことされる。痛いこととか、聴きたくないこと聴かされたり」と言っていたのは、シロ本人がされるという意味ではなくて「その様子を見る」ということが嫌だったってことなんですね。でもって、痛いこと=チンピラへの罰、聴きたくないこと聴かされる=ボンボンへの罰ですから、かなり早い段階で伏線はっていたんですよね。ちくしょう、気づかなかった。
あと音楽が良かったー、音楽への造詣は深くないので誰の何の曲か分かりませんが、ここらへんは演出家さんの趣向なんですかね。ほんの一瞬しか聞けないわけですが、それでもお芝居にピッタリくる、というかグッと引き締まる曲をもってきていて「演出」ってすごいなぁとしみじみ。あれ、何の曲か分かった方いらっしゃったら是非教えていただきたいです。
遠山さんがすごく良かったです、人気がある理由がやっと分かりました。遠山さんが演じたしんみりシーンは全て泣きそうになりました、あれ誰かと見に行っていたら多分泣いていたと思います。なんていうか「兄弟へのコンプレックス」ていう点が微妙に自分と重なっていまして。姉のこと大好きなんですけど、その一方でめちゃくちゃコンプレックス感じていまして。すっごく優秀で、美人で、明るくて、よく気がついて、面白い。羨ましくなる部分ばっかりで、絶対に適わない存在になっているんですが。もしそれが「姉」じゃなくて「妹」だったらコンプレックスの度合いがこんなもんじゃ済まなかったと思うんです。だから「俺がやっていたことも、すぐ抜かれちゃうんだよ」っていう言葉がズキリと刺さりまして。それを経てに「いつもオマエが俺のもの奪ってく」ですもんねぇ。このシーン、遠山さんがふざけているんじゃ?と話題になっていましたが*3それぐらいで良かったと思います、いやあんなんなっちゃいますよ、実際は(苦笑)
そして大さん!大さん!!「佐藤大佐藤大」という名言をいただいた上で見させてもらったのですが、佐藤大でした。今回はあてがきということだったので更に(笑)
遠山さんや五明さんが素晴らしい演技を見せ付けている中、どこまでも「佐藤大」で勝負かけてくるのが…素敵でした。終盤のバンドの話のシーンでの、やりたい放題感ったら凄まじいものがありまして。大さんのふざけた動きの所為で主軸のセリフが入ってこないっていう(笑)
エンディングで写楽先生もいらっしゃっていたのですが、「キャラ設定が曖昧」というクレームに対して「どうせ大さんだから変わるなーと思って」と返していらっしゃいました。この口ぶり、伊藤さん流石です(笑)
大さんは伊藤さんのこの脚本を「俺はすごく好きだよ」と仰っていました、素敵!他の出演者の方々には「打ち上げで言えよ」と怒られていましたが。
伊藤さん曰く「何か伝えようとした、とかない」「本当言うことない」ということでして。普段読書に励んで受けた刺激を素直にアウトプットした結果がこうなのかなーと。今後また脚本を書く機会に恵まれるか分かりませんが、そこに伊藤さんの意志みたいなのも含まれてきたらもっともっと楽しそう!見たい!と素直に思えます。
こういうの書けるんだったら、LLRの仕事にももっと介入したら良いのに…と思います。いや、分からないですけどね?実際ネタが出来上がるまでの間にどれぐらい伊藤さんが携わっているのかは知らないわけですけど。どうも受身に感じちゃうところがあるので…。
LLR、というか福田さんを見ていて「本読め!」って思うことが多々あります。語彙力が無いというか、なんというか。読書が高尚なこととも思いませんし、本を読んでいるから・いないから、でどうこう言うこともないんですけど。「あー、この人は本を読まない人だな」って分かっちゃうのはあまり良くないかなぁと思います。自分がどういう点でそう感じているのかがハッキリしていないので、強く主張出来ないですが。福田さんのそういう部分を伊藤さんが補ったら良いのに!と思うわけです。
もう何度も言っていることですが、本当LLRがどう転ぶかって伊藤さん次第だと思っています、私。もちろん、今の状態でも面白いですしそのまま評価されることも十分起こりうることだと思うんですけど、伊藤さんが本気出していない感が凄まじい(笑)というか、本人が自分のポテンシャルを理解出来ていないって感じなんですかね「福田が一番面白い」ってなっちゃってるようですし。いや、それは良いことなんですけど。私の中では、この公演を通して伊藤さんまだまだ余力ある疑惑がかなり高まっております。

余談ですが、いつしよのチラシに「いっしょに暮らしたい人物または動物は?理由もぜひ!」とあったのですが、ちゃんと理由まで答えているのが遠山さんと石井さんだけっていう(笑)遠山さんったらマジメ!

とりあえず見て、直後に感じていることは以上です。ただ何分頭が弱いために時間をかけないと見えてこないことが沢山ありまして。また追記とかしちゃうかもしれません。

あー、本が読みたい!完全にそういう種の刺激を受けています、お笑いとは全然違っている刺激。

*1:もう中学生

*2:絶対的な恐怖感を与えてくるあたりが

*3:確かにすごい表情でしたが